keiyaku_contractカンボジアにおける不動産賃貸借契約の注意点を指摘致します。

 

まず、カンボジアにおいては、日本のような賃借人を保護する借地借家法に相当する法律がありません。このため不動産賃貸借契約における契約内容は、有利不利を問わず当事者の合意内容によって確定されます。

 

例えば、契約期間を定めれば、その契約期間の到来とともに賃貸借契約は終了します。つまり契約期間が満了するまでに賃貸人と賃借人との間で契約延長の合意に達せなければ退去を余儀なくされることになります。

この点、日本では、契約期間までに賃貸人と期間延長について合意が出来なくとも普通賃貸借契約においては、借地借家法の適用を受けて自動的に更新してしまいます(これを法律用語で「法定更新」といいます)。この借地借家法により賃借人の保護がされているため日本人は総じて契約期間についての危機意識が薄いですが、カンボジアではこの法律の違いを把握しないと莫大な損害を受けることになります。

つまり、飲食業などの建物や内装などに相当額の投資をかける業種の場合、期間満了時点で盛業中であると家主より賃料の値上げ要求が必然的に発生します。家主からすれば場所が良いから盛業中なのだろうという意識が発生するためです。

契約期間の延長交渉が纏まらない場合には、どんなに不当な高額値上げの要求であっても賃借人には、受け入れるか、退去するかの二者択一しか選択枝がないのです。

ですから、賃貸借の契約をする場合には、事業における投下資本が回収できる契約期間が確保できるように交渉をしなければなりません。

 

次に、契約期間というのは、借りることの出来る期間だけではなく、借りなければならない期間でもあります。したがって、借りたものの不採算だから賃貸借契約を解約して撤退しようと思っても一方的には解約することは出来ません。

契約期間の途中において賃貸借契約を賃借人の都合で一方的に解約するには、契約書の条項に解約条項がなければならないのです。必ず事業が上手く進むとは限りませんから、契約書に解約条項があるかを確認する必要があると思います。

 

日本では、契約書に解約条項が定められている契約書が多いですが、カンボジアにおいては期間を定めた賃貸借契約において契約期間途中の解約権を賃借人に与える解約条項を定めている契約書は少ないです。

仮に、解約条項が定めてある場合でも賃貸借期間の途中解約をする場合には保証金は返還されないというのがカンボジアの通例です。この点も日本と異なる商慣習ですのでご理解ください。

 

何よりもお伝えしたいのは、契約をする際には、クメール語であれ英語であれ、丁寧に契約内容を読み解き理解することが重要です。

 

日本人の場合は、借地借家法で賃借人が保護されていることや、宅地建物取引業法により不動産業者が丁寧に説明をしてくれる現状から、契約に拘束されることの危機意識が薄い方もおられます。カンボジアにおける賃貸借契約には法律と慣習の違いを理解し、注意を払うようにしてください。